里道・水路・ため池の所有権

里道・水路・ため池などは、「法定外公共物」と言われ、それぞれの底地は大昔から「国有」であった。ところが、平成10年に閣議決定された地方分権推進計画により、現在は、市町村に譲与された状態である。その「譲与」の根拠法は、次項に「地方分権一括法」の説明として示す。
 それに併せた要点として、それら法定外公共物の「底地」より物質的に上部の構造物の所有権を理解いただきたい。例えば、里道は、場合によって舗装されていたりするが、その「舗装路面」は構築物であり、そのものの所有権者は誰か、水路は、底と側面の3面をコンクリートで築いた構築物として、又、ため池の護岸・取水設備等の減価償却資産の所有権者は誰か。要は、土地所有権は国~市町村だが、その地上構築物等の所有権者が誰かということが要点である。道理は、それらの構築物の施工費を負担したる者が所有権者となる。実際においても、その道理のとおりで、該当の農業用設備の受益農地の耕作者が、農地の面積割にて公平に費用負担し、該当設備を共有している。但し、農政上の補助金出捐の場合は、補助金部分は出捐者の持分となり、受益農地耕作者によって構成する土地改良区が施主になった場合は、土地改良区が該当持分の所有権を取得する。
 つまり、当該法定外公共物の底地は、既に各市町村所有となっていて、その管理は、各市町村がその地域の土地改良区に委任している。
そして、当該法定外公共物の減価償却資産部分は、施工費を負担した農業耕作者が所有権を持ち管理を行い、その内、農業耕作者が自身が構成員となる土地改良区を事業主として、応分の施工費を土地改良区を通して支払い充当した場合は、その土地改良区が所有権を持ち管理を行っている。これが上記要点の理解となる。

法定外公共物である里道・水路は国から市町村に譲与された

前項で言う「譲与」の根拠法
平成11年7月16日付で公布された「地方分権一括法」
 この法律の第113条により、国有財産特別措置法第5条1項が改正され、法定外公共物に係る国有財産を市町村に譲与するための根拠規定が設けられた。根拠規定としたのは、この第5条1項の第5号である。
第5号は、地方分権一括法の関連として、いわゆる法定外公共物のうち、里道・水路(ため池、湖沼を含む)として現に公共の用に供されている国有財産について、市町村より譲与申請があった場合においては、国は速やかに譲与するものとした。
(改正規定の施行=平成12年4月1日、譲与手続を完了する時期=平成17年3月31日まで)
但し、譲与の対象となるものは、国土交通省所管の法定外公共物である里道・水路に限られている。農林水産省所管の漁港区域又は国有林の区域内の里道・水路や、国営土地改良事業により設置された土地改良施設の用に供されている里道・水路は対象外であり、河川法が適用又は準用される河川(1級2級河川及び準用河川)、下水道法が適用される下水道、及び道路法が適用される道路(高速自動車道、一般国道、都道府県道及び市町村道)も第5号規定による譲与対象からは除かれている。
 尚、下水道法・道路法は、それぞれ該当公共物の管理者である地方公共団体に対し当該公共物に係る国有財産を無償で貸し付け、又は譲与できると定める。また河川法第100条は、準用河川を管理者である市町村に対し無償で貸し付けられたものとみなすとする等、派生的に諸法も説明しないと舌足らずとなってしまうが、ここでは敢えて省略したい。